進路

私が中学生の頃……ええ、前世紀の話です、もちろん。機械いじりや工作なんかを好きでやっていた私を見ていた担任の教師が「工業系の5年制の高専へ進学したらどうか」と薦めてきました。「ものごとの本質を見てみたい。大学に行きたい」と(中学でそこまではっきりとした意思を持っていたわけではなかったと思いますが、なんとなくそんなようなことを考えていたと記憶しています)思っていた私は、あまり乗り気な返事はしませんでした。

高専が向いている」「俺は、高専以外を受験するのは認めないぞ」「おまえは普通科の高校に行ったって、ぜったいに落ちこぼれる」と、私が乗り気な返事をしないでいると、だんだんと強硬になっていきました。「おまえのために言ってやっているんだ」とは言われたものの、なぜそこまで高専に進学するのを強要するのか理解不明でした。というか今なお不明です。

そのうち、「高専を卒業したあとに大学に編入できるルートもあるから」とか、そのうち親まで教師から聞いたのか「あんた、普通科の高校に行って、本当にやっていけるの?」とか、挙句の果てに「大学って『卒業論文』とかいうのを書かないと卒業させてもらえないんだってよ。あんた作文苦手じゃない。だいじょうぶなの?」とか。いや「作文苦手」はいまでもそうですが……って、本を書いている人間の言うことじゃないか、これ。

もちろん高専とう存在をどうこう言っているわけではありません。私自身の希望として、(普通科)高校→大学→できれば大学院、という進路を取りたいと思っていただけです。そして、担任教師の薦め(強要)を無視して、そのとおり進んで、私としては正解だったと、いまでも思っています。

などということを思い出したのは、先日秋葉原で例の事件の起こした人物が「自動車メーカーのエンジニアになりたい」のになぜか自動車整備士養成の短大に入学してしまった、という話を聞いたからです。「自動車メーカーに就職してエンジニアになるのなら、理工系の四大に進まないと厳しい」くらいのことはちょっと調べればわかるはずなのですが……。

と、私と同じ(かつ正反対)な事例なので、自分のことを、いまごろになって思い出してしまったわけです。