交換機

「電話の交換機を買って付けてみたんだけど、なんかいまいちなんだよね」
「?」
「使い勝手が悪いというか……」
「??」
「なんか故障しているような感じでもあるし……」
「???」
「こんど見てくれないかなあ」
「あのさあ」
「ん?」
「それって、職場かなんかの話?」
「なんで職場の話になるわけ?」
「だってさあ」
「家のだよ、家の」
「家の……交換機……?」
「そう。前のヤツが調子悪くなったんで」
「どんなふうに」
「ときどき切れたり、雑音が入ったりするんだよね」
「で、交換機?」
「そう」
「お前ん家、前から交換機なんか使ってたの?」
「とにかく、今度見てくれよ」

最後まで話が見えませんでした。だって、家で「交換機」とは。いや、そういうことも無いわけでは無いかも知れませんが、その人物の2Kのアパートで、いったいなぜに「交換機」などが。いや、隠れ「交換機マニア」で、電話の交換機をたくさん収集する趣味があるのかも知れませんが、だったら人に訊かないだろうし。

その後、数日間考えてやっと答えらしきものに気づきました。そいつが言った「交換機」とは、つまり、「調子悪くなった今の電話機と交換するために買った新しい電話」ということらしいということに。

その昔、「ハードディスク」を「ハード」と呼ぶ人(いまでもたくさんいますね)とやりとりしていて、まったく話が見えなかったとき以来の衝撃でした。日本語って難しいですね。

オーディオ装置を新調してみた(その3)

ぜんぜん本題に入らないまま「その3」まで来てしまいました。そろそろ本題に入りたいと思います。

そもそも、なんであんな話をしたかと言うと、「昔とは違って、ある程度(数万円?)以上の製品なら、音にまったく差が無いか、差があっても微々たるものなんじゃないの」と思ったからです。あ、念のため言っておくと、ここではスピーカー(と、もう旧世代の装置であるレコードプレーヤーやカセットデッキなど)は除いた話です。少なくとも私の耳では、数万円のCDプレーヤーと数十万円のCDプレーヤーの音の違いを聞き分けることはできませんでした。そういうのを、ある方面では「糞耳」というらしいですが、それなら「数十万円」引く「数万円」分のお金を使わずにすむわけで、「糞耳」で結構と思っています。

さて、先日、長く使っていた次の装置を処分しました。

前にもお話したように、レコードプレーヤーとスピーカーはまだ問題なく使えそうだったので、そのまま残してあります。上記の4つの機器はラックに収納していたのですが、今回はそのラックも処分する予定です。そこで、次のような方針で行くことにしました。

  • 「音」よりは「機能」優先で。
  • できる限り同じ装置に複数の機能を持っていること。最低でもCDプレーヤーとアンプは同一筐体。
  • 省スペースであること。設置する場所も考えて横幅も狭いほうが望ましい。
  • チューナーは、いまのところ特にFM放送などは聴かないので無くても可。アンプに内蔵されているのならあってもいい。
  • アンプにはPHONO入力(MC/MM)がほしい。外部にイコライザーアンプを別に付ける手もあるが、それでは「できる限り同じ装置に複数の機能」に反する。
  • リモコンで制御できるiPodドックがあるとうれしいかも。
  • デザインはシンプルなものを。色はシルバー系で。
  • カセットデッキは、過去に録音したテープが箱いっぱいにあるので、それを聴きたくなった場合に再生できるものがあったほうがいい。
  • 予算は10万円前後まで。

これらのうち、カセットデッキについてはどうしても別筐体にならざるを得ないようでした。そこで、それ以外の条件でいろいろ探してみたのですが、「PHONO入力(MC/MM)がほしい」が最大のネックになりました。数万円程度でアンプとCDプレーヤー(とチューナーなど)が一緒になった製品はたくさんあるのですが、PHONO入力がある製品はKENWOODにあっただけで、それも残念ながらMM専用です。もう少し上の価格帯で調べてみてやっと見つけたのがこれです。

DENON CD/スーパーオーディオCDアンプ プレミアムシルバー RCD-CX1-SP

DENON CD/スーパーオーディオCDアンプ プレミアムシルバー RCD-CX1-SP

iPodドックが別売りで、それも一緒に買うと12万円程度になってしまい、ちょっと足が出てしまいますが、量販店で実物を見た限りでもデザインも好みのほうですし、音も……いや、音は量販店のうるさい店頭で、しかも音が一番変わるスピーカーが違う環境で聞いても何がわかるかとも思いますが……別に問題無さそうですし、ということでこれに決めました。これ、SACDも聴けるらしいのですが、SACDなど持ってないですし、そこにはあまり意味無いです。そんなのいらないから値段を下げて欲しかったくらいで。

で、実際に設置してみて使ってみた感想ですが、まず筐体が小さいので置く場所には困りませんでした。今までのCDプレーヤーとチューナーとアンプが一体化したものになるので、その分の配線が不要になったのもいいところです……まあ、そのかわりiPodドックの接続が必要になったりしましたが。それにしても、冷却用ファンが付いているオーディオ機器って、私は初めて見ました。筐体自体は、写真で見て想像したのとは違って、(無駄に?)頑丈に出来ています。結構お金がかかっているなー、と。フロントパネルのデザインはシンプルで好みです。電源を入れても、光る部分はすべて赤色で、いま流行りのギラギラした青色LEDなど使っていませんので、落ち着いていて目障りになりません。まあ、あまりに落ち着きすぎていて、ディスプレイの文字が読みづらいのはご愛嬌ですが。

次に操作性についてですが、ボリュームが電子式(というんでしょうか?)で、ゆっくり回したときと、速く回したときで音量の変化の割合が違うのは、慣れないとまごつきます。リモコンでの音量の調節でも同じことが言えます。そう言えばリモコンのあるオーディオ装置も今回のこれが初めてでした。リモコンは、いまいちボタンの配置等がこなれていない感じで、使いやすいとは言いがたいと感じました。

最後に音についてですが……まあ、いいんじゃないでしょうか。別に気になるところもありませんでしたし。というか、私は「糞耳」らしいので、これ以上はノーコメントということで。

オーディオ装置を新調してみた(その2)

前回の続きです。

CDプレーヤーにおいて、確かに、CDドライブのような回転系によってその後ろにあるDAコンバータやアナログ回路部分が影響をまったく受けないか、というと、前回コメントをいただいたように、受ける可能性は否定はできませんし、メーカーや評論家などがそういう説明をしているのを読んだことがあります。

  • CDの回転系のサーボ回路が動作する
  • 回転系の消費電力が変化する
  • 同じ電源を使っている後段の回路に影響を与える

しかし、これが気になるなら、電源を分けてしまえばいいわけですけど、そうるすと「同一筐体に入っていると、その他の影響も受けて、云々」とか「同じ電源ケーブル使ってると、そこでの電圧降下の影響があって、云々」とか、まあ、いくらでも理屈(らしきもの)は付けられますね。いや、それで「音質」にどれだけ影響があるのかはわかりませんが。電源と言えば、まあたぶんこれは冗談なんでしょうけど、電力会社によって音の傾向が違うとか、火力発電と水力発電原子力発電では音の傾向が違うとか、そんな話もあるようですね。これってやっぱりアレですか? 火力発電の電力を使うと燃え上がるような情熱的な音になったり、水力発電だと研ぎ澄まされた透明感のある音になったりするとか、そういうヤツですか?

どうしても「CDプレーヤー」として「回転系の宿命」(?)から逃れるんだったら、こんなのはどうでしょうか。

  • プレーヤーに1GB位のメモリ(DRAMでいいのかな?)を積む
  • CDを入れると、プレーヤーが自動的にメモリにCDの内容を(誤り訂正をしながら)コピーする。
  • コピーが終了したのち、CDドライブ部分の回路の電源を切る。
  • その後で、メモリの内容を使って再生する。


いまどき、1GBくらいのメモリの値段なんて大したことありませんし、これなら「回転系の宿命」(?)から逃れられるように思えますが、どんなもんでしょう。まあ、CDドライブ自体、高速読み取りができるようになったとは言え、CDの内容をメモリにコピーするのは数分はかかるでしょうから、使い勝手と言う点ではあまり実用的ではないとは思いますけど、いわゆる「オーヲタ」の方々は、あまりそういうことを気にしないんじゃないでしょうか。「いい音で聴くためには多少(どんな?)苦労も厭わない」ような方々に見えますし。昔から「電源を入れた直後の音は聞くに堪えない」「アンプが安定するのには、電源を入れてからn時間かかるので、聴くn時間前には電源を入れておくべき」と言われていますし。ちなみに、ここで、nは、3だったり、6だったり、12だったり、24だったりするらしいです。しかも、ただ単に電源を入れておくだけではダメで、これから自分が聞こうとする傾向の曲を安定するまで流しておく必要があったりするらしいです。聞くに堪えない音をずっと流しておく苦労を経て、やっとまともな音で聞くことができるようになるそうです。大変ですね。

話が逸れてしまいました。とにかく「回転系の宿命」(?)から逃れられるCDプレーヤーっていうなら、こうすればいいように思えます……って、もしかして、もうこういう製品が出てたり、誰か特許を取っていたりします?

「回転系の宿命」(?)から逃れるために、CDの内容をリッピングしてNASに入れておいて、それをLAN経由で読み出して、「ネットワークメディアプレーヤー」とかそんなふうに呼ばれている機器で再生する、なんてのが流行っているらしい、ということは前回も書きました。ネットワークメディアプレーヤーの中には300万円もするようなものもあるようで……世界が違いすぎます、少なくとも私とは。もし、「あなたに300万円あげます。ただしオーディオ関係ですべて使ってください」と私が言われたら、部屋をなんとかする(って、これだけで300万円では足りないような気がしないでもないですが)のと、あとはスピーカーに投入しますけど、300万円もプレーヤーにかけられる人は、部屋とスピーカーにももう十分お金を投入しているんでしょうから、こんなこと言っても無意味かもしれません。

しかし、プレーヤーとNASをLANでつなぐとなると、いろいろな機器や回路やソフトウェアが途中に入ってくるわけで、そこでの「音質の劣化」とやらは気にならないのでしょうか? 雑誌の見出し風にしてみると……。


20機種を試聴してわかった、高音質ハブはこれだ!

高音質を追求するならダムハブに限る。スイッチングハブはスイッチングノイズがあり高音質オーディオ用には向かない。

電源内蔵より、ACアダプタの機種を。電池駆動にも挑戦してみよう。

メーカーごとの音の傾向を分析する。高音質を目指すなら、ぜひCISCOを使ってみよう。


NASの改造、大特集

あなたは、買ってきたNASをそのまま使ってはいませんか? ちょっと改造するだけで音が激変!

NASに最適なインシュレータとは?

SATAケーブルにこだわってみよう、SATAケーブルを変えるだけでこれだけ違う!

高音質にこだわるならファンレスに。自然冷却を実現するためのポイント。


NASのOSに無頓着ではダメ。本当に音質のいいOSとは?

Linuxならカーネル2.4系を。

Windows Serverを使った自作NASに挑戦してみよう。

音楽用途なら、Mac OS X Serverがベスト!


知っていましたか? IPアドレスによる音の違い

DHCPには任せられない。固定IPアドレスに挑戦してみよう。

クラスB、クラスCよりクラスAを! 音の広がりがまったく違う!

プライベートアドレスでは本当の音は出ない。

試聴してわかった、もっとも音のいいIPアドレスとは?


いくらでも出てきますね、コレ。というか、もうすでに語られているネタかも知れませんが。わざわざプレーヤーとNASを別筐体にして途中に余計なものをたくさん入れるくらいなら、一緒にしちゃったほうがいいように思えるのですけどね。プレーヤーにSSDかなんか搭載して500万円くらいの値段にするとか。ああ、そうか。途中に何も弄るところが無いと、アクセサリメーカーも出版社もメシの種が無くなってしまうか。だからあえて余計な部分をいっぱい作って、いろいろと弄る余地を残して……。

さて、「オーディオ装置を新調してみた」と言いつつ、今回もあいかわらずぜんぜん本題に入っていません。長くなりましたので、この辺りにして次回に続きます。

オーディオ装置を新調してみた(その1)

うちでいままで使っていたオーディオ装置、ほとんどが20年以上も前に買ったような、かなりの年代ものでした。さすがにガタがきていたこともあって、レコードプレーヤーとスピーカーを残して、あとは新しくすることにしました。で、私の知っているオーディオ関係の知識と言えば、20年以上も前のもので、最近のことはさっぱりわかりませんので、まずは勉強してみることにしたわけですが……。

「なんか、知らないメーカー、特に外国のメーカーが多いなあ」とか、
「知ってるメーカーも、みんなAV系の方にシフトしちゃってるみたい」とか、
DENONって『デンオン』って読んじゃダメなの?」とか、
「それにしても、怪しげなオカルトグッズがいっぱい売ってるし。なんでたかが電源タップがウン万円もするんだ」とか、

知らないことだらけです。以前、高音質HDMIケーブルなるものについて書きましたが、あんなものはかわいいもので、今の「オーディオ界」にはオカルトグッズがあふれているようです。

私が学生の頃、いまからウン十年前には、音楽のソースと言えばまず真っ先に挙げられたのがレコード(LP)でした。これを再生する装置がレコードプレーヤーですが、この扱いはかなりデリケートです。レコードプレーヤーは、レコードに刻まれている溝を針でなぞって、その針の機械的な振動を電気信号に変換します(まあ、この変換を行う部分は「カートリッジ」と呼ばれる、プレーヤーに取り付ける別な部品ですが)。逆に、電気信号を機械的な振動(ひいては空気の振動)に変換するのがスピーカーです。レコードプレーヤーとスピーカーは、音質に大きな影響を与えます。大雑把に言えば、これらの値段と音質は単調増加の関係にあると言っていいと思います。まあ、数十万円以上のボッタクリ領域(という表現は語弊があるかも知れないけど)では、必ずしも単調増加とは言えなくなるとは思いますが。なお、レコードプレーヤーやスピーカーに比べれば、電気信号を増幅するアンプの音質へ与える影響はずっと小さいと言えます。

レコードプレーヤーは振動にも弱く、レコード再生中にプレーヤーをポンポン叩くと、その音がスピーカーから出てきたりもします。レコードプレーヤー全盛期には、振動を抑えること(だけとは限りませんが)を目的に、さまざまなアクセサリが発売されていました。こういうアクセサリは作るのも(プレーヤー本体に比べれば)簡単で、それこそたくさんのものがありましたが、それなりに音質に変化があったり(無かったり)しました。

さて、その後、時代はLPからCDへと移り変わりました。CDプレーヤーは、レコードプレーヤーとは本質的にまったく違う原理で、CDに格納されているデジタルデータを読み出して、それをDAコンバータでアナログ信号(電気信号)に変換します(って、こんなこと、いちいち書かなくても、みなさん知ってますよね)。CDプレーヤーにおいて、音質を左右するのは、基本的にはDAコンバータと、それ以降のアナログ回路の部分と考えられます。もちろんそれより前の、CDからデジタルデータを読み取る部分でのエラーの多寡とその訂正処理で、多少音質が変化することも考えられなくないのですが、そもそも普通の再生環境において読み取りエラーは発生しないと聞いたことがあります(ウラは取っていません)ので、無視できるものとします。いずれにしても、CDプレーヤーにおける音質の差は、レコードプレーヤーにおける音質の差よりはるかに小さいと考えられます。

ところで、CDプレーヤーは本質的にレコードプレーヤーとは比較にならないほど振動に強い(はず)です。もちろん、CDからデータを読み出すことができないほどの振動を与えたら音は途切れてしまうでしょうが、その状態を「音質が悪い」とは普通表現しないと思います。しかも、多少の読み取りエラーに耐えるように、データはある程度先読みされていると思われます。そんなわけで、いままでレコードプレーヤー用にアクセサリを作ってウハウハ状態だった(かどうかは知りませんが)アクセサリメーカーは重要なメシの種を失うことになってしまいます。そんな中、一つの単語が救世主のように現れました。それは「ジッター」です。

CD音源に対して、
「このケーブルを使うと音が変わる!」とか、
「この共鳴なんちゃら(←忘れた)をCDプレーヤーに貼ると音が変わる!」とか、
マイナスイオンをふりかけると音が変わる!」とか、
これははぜんぶ「ジッター」という単語で説明できる(るらしい)のです。ジッターは時間軸方向のゆれです。一定間隔(サンプリング周期)で波の振幅を数値化したものが音のデジタル化なのですが、それをアナログ信号に戻すときに「一定間隔」にゆらぎがあって「一定間隔」でなくなってしまったら、ということです。そこにゆらぎがあったら、それはまあ音質に影響を与えるでしょう。ただ、どの程度のジッターがあったら人間の耳に聞こえるのか、という検証は必要でしょうけど。で、CDをはじめとするデジタルデータの音源で音質が変わるのは、ジッターのせいなんだそうです。で、高いケーブルを使ったり、マイナスイオンをふりかけたりすると、ジッターが減って、音が良くなるんだそうです。

いまの、高級オーディオ界のトレンドには、USBメモリSSDに、CDなどからリッピングした音楽データを入れておいて、ネットワークメディアプレーヤーのようなもので再生する、なんてのがあるようです。そこには「回転系の宿命だったジッターから解放」なんて言葉が添えられていたりします。確かに、USBメモリSSDなら回転するところがどこにもありませんからね。でも、よくよく考えてみるに、レコードプレーヤーでLPを再生していた時代ならともかく、CDプレーヤーでCDを再生したとき、CDの回転のムラがジッターの要因になり得るんでしょうか? 普通に考えたら、CDプレーヤーの動作は次のようになっているんじゃないか、と思うのですが。いや、私はCDプレーヤーの内部の動作をよく知らないのですけど。

  • CDからデータを読み出し(先読みして)、バッファに格納する
  • バッファからデータを読み出し、DAコンバータに送る

これらのうち、前段はCDの回転ムラの影響を受けることは受けるでしょう。でも、バッファには、リトライしたり誤り訂正を行った「正しい」データが入るはずです。で、後段。こちらは、CDの回転ムラとか無関係に、プレーヤー内部で生成したクロックにしたがってデータをDAコンバータに送ると思われます。これならば、回転系がジッタの発生源になる、ということは無いはずです。つまりこれは前段と後段が非同期で動作している場合です。もしかして世の中のCDプレーヤーは同期して動作しているのでしょうか。ううむ。

[長くなったので「オーディオ装置を新調してみた(その2)」に続く]

改訂した

5年ほど前に書いた本のの増補改訂版が出ます。

Lepton先生の「ネットワーク技術」勉強会 増補改訂版

Lepton先生の「ネットワーク技術」勉強会 増補改訂版

初版は、私の初めての書き下ろしで、かなり苦労した記憶があります。このときの経験から「1冊の書き下ろし原稿の執筆期間は4ヶ月」という、個人的な法則ができました。で、今回の改訂版ですが、私として初めての改訂です。改訂の作業自体は1ヶ月くらいでなんとかなるか、と思っていたのですが、結局2ヶ月かかってしまいました。「1冊の改訂作業は2ヶ月」という法則は……よくわかりません。どの程度改訂するかによりますから。

さて、この増補改訂版ですが、「増補」とあるように、基本的には、この5年間に一般的になった新しい技術を中心に書き足しています。もちろん初版の内容を全体的に見直して、時代に合わなくなっているような記述は書き換えていますし、説明のための画面コピーや写真も入れ替えています。その一方で、初版にある内容は基本的にはすべて残しています。この改訂の件で編集の方と打ち合わせしたときに、次のようなやりとりがありました。


私「書き足すとページ数が増えちゃうから、初版の内容のうち、もう使われることも少ない技術の解説などを省きましょうか?」
編「ページ数は増えてもかまわないから、原則としえすべて残しましょう」
私「そうですね。今がどうなっているのか、どうして今こうなっているのか、を知るためには歴史を学ぶことも必要ですしね」

というわけで、結局370ページほどになりました(初版は300ページ強)。改訂版の全体的は雰囲気は、図・表・イラストという最も目が行きやすいところをを(初版と同じ)水野さんという方にやっていただいていることもあり、初版と大きく違っているようには見えませんが、内容的には今の時代に合うようにかなり手を入れています。書店にあったら手にとってみていただければうれしく……あ、もちろん買っていただければ、さらにうれしいですが。ページが増えた関係上、定価がちょっと高くなってしまいましたけど。ごめんなさい。

KB968102

最近、会社のパソコンで怪奇現象が起こるようになりました。Excelでファイルを開いて、何か作業して、それから保存すると、元のファイルが消えてしまうことがあるのです。現象を調べてみると次のようなことがわかりました。

  • 先々週の月曜日から、この怪奇現象が起こるようになった
  • 消えるのは、ファイルサーバにあるExcelのファイルのみ
  • ファイルのあるディレクトリに英数字8文字(拡張子無し)の怪しげなファイルが残される

「英数字8文字(拡張子無し)の怪しげなファイル」というのは、昔からたまに目にする、Excelが作るテンポラリファイルで、べつに怪しげでも何でもないのですが、「怪奇現象」と言ってしまった手前、そういうことにしておきます。このファイルが残されるのは、経験上Excelが落ちたときなのですが、今回の「怪奇現象」では、Excelは正常で落ちていないにもかかわらず、このファイルが残されているところが謎です。

「おっかしいよなあ。なんでファイルサーバにあるExcelファイルだけがこんなことになるんだろ? そういえば、起こるようになったのは先々週の月曜日からだよなあ。ということは、その直前に何か環境を変えたとか、そういうことは……あっ」

そういえば、ファイルサーバの共有ディレクトリに対してDFSレプリケーション(DFSR)の設定をしたことを思い出しました。DFSRとは、Windows Serverに付属してくる機能で、ファイルサーバを複数台立てておいて、それらの間でリアルタイムにレプリケーションを行うものです。たとえばファイルサーバAとBに対してDFSRの設定をしておくと、ファイルサーバAのhoge.xlsというファイルを書き換えると、即座にファイルサーバBのhoge.xlsの内容が書き換わります。逆も(設定によりますが)同様です。この機能を使うと、ファイルサーバAが障害を起こしても、複製がファイルサーバBにもありますから、ユーザはそっちを見ればよいことになります。

で、いろいろと調べてみたところ、次のような文書が見つかりました。

「Windows Server 2008、または Windows Server 2003 R2 で DFSR が有効に設定されている共有フォルダに Excel ファイルを上書き保存した場合にファイルが消失することがある」

なになに?


Microsoft Windows Server 2008、または Microsoft Windows Server 2003 R2 で DFS Replication (DFSR) が有効に設定されている DFS が設定された共有フォルダに存在する Excel ファイルを開き、上書き保存を実施した場合にファイルが消失し、Excel により作成された一時ファイルが残されることがあります。

まさにこれです。現象からして間違いありません。で、解決策は……


方法 1 : 共有フォルダで DFSR を行わない

いや、そりゃダメでしょ。必要だからDFSRを使っているわけで……


方法 2 : DFSR のレプリケーション スケジュールを変更する

ユーザーが使わない夜中だけレプリケーションをしろ、って、それじゃあリアルタイムにレプリケーションできることが売りのDFSRの意味がないじゃん。ええと、ほかの解決案は……えっ? 無いの?


マイクロソフトでは、この問題をこの資料の対象製品として記載されているマイクロソフト製品の問題として認識しています。

はいはい、ちゃんと認識してください。で、修正プログラムはいつ出るのか、と当該ドキュメントを隅から隅まで読んでみたのですが……書いてません。

  • Excelマイクロソフト製のアプリケーションの中でも使用頻度はかなり高いはず
  • DFSRは共有ディレクトリに掛けるのはあたりまえ(そういう使い方するものだし)
  • なのに同時使用できない、いずれもマイクロソフト製品なのに
  • 回避策には「DFSRは使うな」しかない
  • 修正プログラムはいつ出るかわからない(もしかして、出す気が無い?)

これらのことから導き出される結論は「DFSRは使えない」(ただし、Excelのファイルを絶対に保存しないと確信できる場合を除く)

Bluetoothで悩む

ほんの2年くらい前までは「Bluetoothなんて、あんな中途半端なもん、いったい何に使うんだよ」などと思っていた私なのですが、気づいてみれば、Bluetooth対応のマウスやらキーボードやらヘッドセットやら(それからGPSロガーなんていうものまで)、両手の指では足らないほどになってしまっています。Bluetoothインターフェースを持っているPCも、Mac Book、LOOX U、dynabook SS、それにデスクトップPC1台、と4台もあります。いつの間にこんなことになってしまったのでしょう?

先日買ったメインのノートPCも「Bluetoothインターフェースが付いていること」が絶対条件で、dynabook SS RX2の直販モデルにしたくらいです(店頭売りモデルはナゼかBluetoothに対応していなかった)。まあ、USBに挿すBluetoothインターフェースでもいいと言えばいいのですが、出っ張りはできるだけ避けたい、ということで。

さて、そのdynabook SS RX2なのですが、先日も書いたとおりBluetoothの調子がよくありませんでした。大きな問題点は2つ。

  • OSをスリープから復帰させるとBluetoothが無効になってしまう……というのは正確ではなくて、じつは30分くらい待つと復活しました。とにかく、OSのスリープ復帰後30分はBluetoothが使えないという状況。
  • Apple Wireless Keyboardを使っていると頻繁に切断される。また、切断される直前に押していたキーが延々とリピートされることもある。

最初の件については、東芝のサポートにも訊いてみたのですが「そのような現象は報告されていません。いちどVistaで同じ現象がでるか確かめてください」と言われてしまいました。なんかXPにダウングレードした私がいけないみたいな……XPへのダウングレードもサポートされているはずなんですけどねえ、どっかのメーカーと違って。いずれにしても、やっと環境が整ったところを、Vistaに戻すのも大変だなあ、と思ったわけです。

二番目の不具合については、いろいろ検索していたところ「東芝スタックとApple Wireless Keyboardは相性が悪い」という未確認情報を得ました。「東芝スタック」というのは、東芝製のBluetoothドライバ(スタック)のことで、東芝製のdynabookには当然のごとくこれがインストールされています。

東芝のがダメだとすれば、別のに変えてみるのがセオリーですね。まずはマイクロソフト製のスタック、これは無料……ではなくてWindows XPに付属していますから、別に費用が発生しないというだけです。東芝スタックを削除して再起動すれば、PnPで勝手にマイクロソフトスタックのインストールがされるはずなので、そのようにしてみたのですが、ナゼかOSからBluetoothインターフェースが見つからないようで、何ごとも起きませんでした。デバイスマネージャを見ても「不明がデバイス」がありません。不思議です。いずれにしても、これではマイクロソフトスタックを使って状況を確認することすらできません。

そもそもXP付属のマイクロソフトスタックは機能的にかなり貧弱で、ヘッドセットが使えない等、これでうまく行っても実用性は低いのでこれ以上深入りはしないことにしました。で、次に白羽の矢を立てたスタックがBlueSoleilです。これは売り物なのですが、転送量2MB・15日間という制限付きで試用ができるようなので、試してみることにしました。まず、東芝スタックが削除された状態でBlueSoleilをインストールすると「アダプタが見つかりません」(←確かこんなメッセージ)が出てしまいました。このPCのBluetoothインターフェースは、やっぱり東芝スタックしか使えないのでしょうか? まあ、東芝製のPCだし、その可能性も無きにしも非ずなのですが、「OSからアダプタ(デバイス)が見えない」というのがどうにも不思議です。Mac BookにWindows XPを入れたときにも、デスクトップPCのUSBにBluetoothインターフェースを挿したときにも、すぐに「新しいデバイスが見つかりました」と出てきたのに、このノートPCの場合にはそれが出ないのです。

もしかすると、何らかの(低レベルの)ドライバが入ってないと、このノートPCのBluetoothインターフェースはOSから見えないんじゃないか、そしてそのドライバは東芝スタックの中に入っているんじゃないか、と思い始めました。とは言うものの、東芝スタックのインストール時には「低レベルのドライバだけをインストールする」というような選択肢はありません。嫌でも全部入ってしまいます。そこで強引な手段ですが、まず東芝スタックを(全部)インストールして、その上でBlueSoleilをインストールすることをやってみました。つまり、Bluetoothスタックを2つインストールする形です。で、やってみたところ、これがすんなり通りました。BlueSoleilをインストールすると、東芝スタックのうち重複する部分が勝手に無効になるようで、特に何も考えずにBlueSoleilが使えるようになりました。手作業で行ったのは、東芝スタックのソフトのうちスタートアップに入っていたBluetooth Managerを起動しないようにしただけです。

で、BlueSoleilを試用してみたところ、2つの不具合「スリープから復帰したときにBluetoothが使えない」「Apple Wireless Keyboardが頻繁に切断される」とも完全に解消しました。やはり、東芝スタックではApple Wireless Keyboardはダメみたいです。「仕方ないから別のキーボードを買おうか」と悩んでいたのですが、これで解決です。ちなみに、ここまでBlueSoleilとApple Wireless Keyboardを使って書いていますが、まったく切断されません。もし東芝スタックだったら、もう10回以上切断されているはずです。

ちなみに、BlueSoleilはIVT Corporationというところが開発した有料のソフトです。古いバージョンはBluetoothインターフェースに付属していたりしますが、そもそもそれは当該ハードウェアでしか使えないライセンスですから、今回は使えません。なので購入することになるわけですが、この会社は国内に代理店が無いようで、直接買うしかありません。お値段は19.95ユーロです。本日のレートでは1ユーロが約136円です。ひところ120円以下まで下がったような記憶が……その頃と比較すると数百円はソンしたような。